事業承継の手段として廃業(精算)を選ぶ

事業承継をするための後継者が見つからないという中小企業の経営者は多く、どのように会社を残すか悩まれています。

当サイトでは事業承継の方法や内容について紹介してきましたが、こちらでは結局後継者不在のまま経営者が引退する場合について紹介します。

多くの優良企業が「後継者不足」で廃業を選択

どんなに素晴らしい経営者でもいつかは引退する時が来ます。中小企業の経営者の年齢は平均して60歳前後なのでそう遠い未来というわけではないようです。経営者が引退してしまえば会社は存続できないため事業を畳むしかありません。

会社の都合で事業を畳むことを廃業あるいは生産と言います。

もし、会社が債務超過に陥りどう頑張っても解決できないようなら破産となるし再生の目がある時も民事再生や会社更生という手段が取られます。
つまり会社が存続できなければ廃業でなく倒産してしまうのです。

これが意味するところは「廃業する会社には意外と優良企業が多い」ということです。仮に業績が悪かったとしてもしっかり債務が残らないタイミングで会社をたためているわけですから会計がうまく機能していることが伺えます。

年間7万社が後継者不足で廃業というデータも

事業がうまくいっているのに、将来性だってあるのに廃業しなければいけない理由…それは後継者不在です。
経営者が引退するまでに後継者を探せず、かといって適当な人間に会社を引つづこともできず不本意に廃業となってしまいます。

中小企業庁の調査によると中小企業の経営者の半分以上は健康問題や年齢の問題で廃業していることがわかりました。その数は毎年7万件、後継者不在で廃業の危機にある企業はすでに127万社あると考えられています。これは3社に1社という非常に大きな問題です。

廃業を選択する背景とは

いうまでもなく後継者不在によって廃業を迫られるのは中小企業です。大企業の場合は社内あるいは社外からの後継者を探しやすく事業承継の準備をしっかり行えるだけの地盤を持っているのですが、中小企業の場合は後継者探しにかけるコストが不十分な上に事業承継のノウハウがないことも廃業の理由となっています。

さらに、中小企業に将来性を感じてくれる人が多くないことや家族が経営を引き継いでくれないことも数少ない後継者の候補をより少なくしています。逆に中小企業の経営者が息子や娘に経営者の責任を引き継ぎたくないと考えて廃業する場合もあるようです。

先ほど説明した通り廃業をするということは経営に余裕がある状態であることを意味し、黒字企業や評価の高い企業でさえ継続できない勿体無さがあります。

廃業・精算のメリット、デメリット

廃業・精算を選ぶと最終的に会社はなくなり、会社の持っていた財産は株主に分配されます。負債がある場合は相殺します。
会社を廃業するためには株主の過半数以上が出席した株主総会で3分の2以上の賛成が必要です。そうすると解散の決議が出されるので、いちはやく株主と取引先に解散を通知します。
そして、財産の整理を行います。あらゆる財産の所有状態が変わるので以外と手続きが煩雑です。

メリット

会社経営を終わらせられる

廃業のメリットは会社経営を終わらせられることです。しっかり清算できれば経営者が債務から解放されるし、仕事をする必要も無くなります。財産は株主に分配されますが経営者や創業者は多くの株を持っているのでそれなりの資金を得られます。

デメリット

廃業のデメリットはこちらです。

従業員を守れない

廃業すると会社が消滅します。よって従業員は全て解雇しなくてはいけません。通常、廃業する場合は従業員に退職金を渡して再就職のサポートをするものですがそれでも立場が不安定であることは無視できません。
一緒に働いてくれた従業員を守るために事前に他者へ声をかけておくこともあり得ます。

取引先に迷惑がかかるかもしれない

会社が一つ消えるということは取引先の企業にしてみれば大事な収入源が丸々一つ消えることを意味します。特に懇意にしていた会社にとっては間違いなく痛手になるでしょう。解散の決議がされた後はしっかりと事情を説明してあげましょう。

必ずしも黒字で清算できるとは限らない

廃業をする以上は手元にお金が残る前提があるはずですが、財産の売却が思うように進むとは限りません。特に設備機械は安く買い叩かれがちです。この見通しが甘いと経営者が思わぬ借金を背負うかもしれないです。

廃業する前に。M&Aという選択肢

廃業することは従業員や取引先にとってのデメリットが懸念され、できれば事業を継続させることの方が望ましいです。それがわかっていても後継者が見つからないのではしょうがないという経営者におすすめしたいのが第三者とのM&Aです。

M&Aとは事業や経営権を譲渡するものですが、第三者を広く探すことで望ましい後継者を見つけやすくなります。自身で買い手企業を見つけるのが難しいなら専門的なノウハウと豊富なネットワークを有するM&A会社の力を借りましょう。

廃業(精算)とM&Aの比較

廃業とM&Aを比較するとうまくいった場合はM&Aのメリットの方が大きいです。

M&Aは廃業より多くの利益を得られる

まずM&Aは廃業より多くの利益が得られます。そう断言できる理由はM&Aの場合会社の純資産だけでなく営業権も評価してもらえるからです。廃業の場合は会社をたたんでしまうので将来性がない一方でM&Aなら会社の将来性も取引額に上乗せしてもらえるのです。

また、純資産についても廃業の場合は実際に売却できる価格より低く見積もられ設備機械については全く値段がつかないことさえあります。下手をすると清算価格が低すぎて負債を賄いきれない危険があります。

しかも、法人の経営者が代わるので法人税のことを考えずに良くなります。

M&Aは従業員を守れる

M&Aは会社がそのまま残るので従業員の雇用を守れます。あくまで従業員は会社と契約しているわけですからM&Aを理由に解雇されることはないのです。同様に顧客や仕入先の経営も不安定にならずに済みます。

とくに優良企業であれば社会にとっても廃業がデメリットになります。

必ずしも良い買い手が見つかるとは限らない

ただしこれらはあくまで良い買い手が見つかった時の話。良くない買い手に会社を渡してしまうと廃業するより大きな損失を生み出すかもしれません。日本のM&Aは7割失敗すると言われる時代だからこそ望ましいM&Aを実現させたいですね。