M&Aにおける企業価値の評価方法とは

企業や事業の価値を算出するプロセスを「バリュエーション(企業価値評価)」といいます。バリュエーションは、売り手企業、買い手企業の双方にとってM&Aの意思決定をするうえでの判断基準となるとても重要なステップです。

企業評価が必要なタイミング

まずは、M&Aのさまざまなプロセスにおいて、どのような場面でバリュエーションが必要になってくるのかを下図から見ていきましょう。

最初は、(2)(3)のタイミングで売り手が売却希望価格を設定することからスタートします。この売却希望価格をベースに(8)で買い手は買収希望価格を決めて交渉を進めていくことになります。交渉の過程を経て、(10)の意向表明書の提出で買収希望価格を記載します。次に、事前情報や資料を十分に精査して基本合意書を締結するタイミングで譲渡価格の設定をします。その後デューデリジェンス(買収監査)を実施し、その結果から譲渡価格を調整して、最終的な譲渡価格を決定し(12)の最終譲渡契約締結となります。

このように、お互いの希望価格の設定から最終譲渡価格の決定までのあらゆるプロセスでバリュエーションが必要となってきます。それぞれのタイミングで難しい価格調整が必要となるため、信頼できるM&Aアドバイザーと相談しながら交渉を進めていく必要があります。

企業価値評価方法の種類

企業価値を評価する方法には代表的な「時価純資産法」「DCF法」「類似上場会社比較法」の3つのタイプがあります。

時価純資産法

会社の純資産を基準に企業価値を評価する時価純資産法は、「ネットアセット・アプローチ」、「ストック・アプローチ」、「コスト・アプローチ」などと呼ばれています。客観的に算定できるという点がメリットですが、逆に将来キャッシュフローや時間価値などが、まったく考慮されていない点がデメリットだといえます。

DCF法

M&Aで活用する企業価値評価方法の中で最も一般的な方法です。この「インカム・アプローチ」であるDCF法は、事業を行うことで生まれる「将来のキャッシュフロー」を算出して株式価値を計算します。これから先、企業が生み出すであろう収益を基準に評価をするのでしっかりとした事業計画を策定することが大前提となります。

DCF法のメリット
  • M&Aによるシナジー効果やバリューアップを金額として盛り込むことができる。
  • 買収後の事業計画を前もって策定できるので事業を進めるうえでの目標設定ができる。
DCF法のデメリット
  • 将来的な損益予測や割引率を算出するときに主観が入る恐れがある。
  • 他の評価法と比べてパラメーターの設定が複雑で、価値算出が手間である。

類似上場会社比較法

「マーケット・アプローチ」である類似上場会社比較法は、上場している同業企業の株価を参考に自社の株価を類推する方法です。過去の取引事例などの客観的な数値を利用するので売り買い双方での意識のズレが少なくて済みます。しかし、この方法は大体の株価を類推する方法なので、類似上場会社比較法だけでバリュエーションをして意思決定をするのはとても危険だといえます。あくまでも判断するうえでの参考として有効活用すると良いでしょう。

その他の方法

上に挙げた代表的な3つの手法以外にも、投資金額を何年で回収できるかを算出する「回収期間法」や回収期間法と同じように投資案件の選別が必要な時に使う「内部利益率法」、一定期間の収益を還元利回りで算出する「収益還元法」などがあります。

企業価値評価の際のポイント

企業価値評価は、売り手にとっても買い手にとっても、戦略的に価格交渉を進めていくためのベースとなる大切なプロセスです。会社の規模や業種、M&Aの目的などにより適切な評価方法を選択して実施しましょう。実施する際のポイントは、M&A後のシナジー効果やリスクなど、あらゆる角度から分析して適切な投資額を見極めることです。

企業価値評価はキャッシュフローで考える

利益は各企業が採用する会計基準によって大きく違ってきます。だから企業価値を評価するときに、それだけをベースにして意思決定をするのはとても危険です。一方キャッシュフローの場合は、会計基準や減価償却の処理方法の違いに左右されることなく「お金の増減」にだけ焦点を当てればよいので結果はすべて同じになります。
このような理由から、企業価値評価をする際には、利益ではなくキャッシュフローで考えていく必要があることをしっかりと頭に置いておきましょう。

事業計画の妥当性を精査する

バリュエーションをするときに一番重要なポイントは事業計画の妥当性です。キャッシュフローやそのベースとなる事業計画の精査、デューデリジェンスといったプロセスを通して、理にかなった納得のいくものにブラッシュアップしていく作業が必要だといえます。

いくつかの評価方法を併用する

客観的な視点でいくつかの評価方法を使い分けることも有効です。例えば、投資案件がたくさんある場合は、回収期間法や内部利益率法で優先順位を付けて案件の数を絞り込んだうえで、DCF法で判定をするというフローも良いでしょう。いずれの方法の場合も、将来キャッシュフローを算定し、その期待値と売買金額を照らし合わせた上で、慎重に意思決定をすることがとても重要です。