組織統合(PMI)の重要性

PMI(Post Merger Integration)とは、M&Aの後に実施される経営統合作業のことをいいます。M&Aは案件を成約させることがゴールだと思われがちですが、ある意味クロージングがスタートだといっても過言ではありません。

この組織統合マネジメントが不十分であることが原因でM&Aが失敗に終わるといったケースが多く見られます。
PMIのプロセスをスムーズに推進するためには、デューデリジェンスの直後から経営統合を見据えて準備をすすめていくことが理想です。

PMIの重要性

PMIの準備と推進によって生み出される結果は異なってきます。次の3つのポイントに注意をして経営統合マネジメントを実施しましょう。

1.統合後のシナジー効果

M&Aの目的は売り手と買い手双方のシナジー効果を最大限に引き出し、M&Aを実施する前以上の利益と継続的な価値を創出し続けることです。そのためには経営統合作業前から短期と中長期的な経営戦略を立てておくことが重要です。このポイントを十分に理解したうえでPMIを実施しないとM&A前よりも価値の創出ができない組織となる恐れがあります。

2.企業文化の違いの吸収

M&Aは2つの異なる組織を1つにまとめる作業です。それぞれ異なる企業風土や文化の中で育った人材が交わると摩擦が生じるのはごく当たり前のことです。人事制度や取り組み、考え方、社員間のモチベーションなどのギャップが経営統合の障害となり計画通りに作業が進まないケースが頻発します。このような事態を回避するためにはデューデリジェンスの段階からPMIを想定した準備をすすめておくことがポイントとなります。

3.マネジメントの重要性

経営統合後の価値の創出がM&Aのゴールだといえます。その価値を生み出すポイントは売り手と買い手双方に生じるマネジメントのギャップをクリアーにすることです。両社のマネジメントレベルが同等の場合は、レベルの低いマネジメントスタイルが導入される可能性も十分考えられます。逆にマネジメントレベルに格差がある場合は、統合の際に優れた方のマネジメントが導入される可能性が高くなります。その結果、従来の肩書や役割にこだわらないフェアな人材登用が実行され、シナジー効果が最大限に発揮されることが期待できます。

PMIの流れ

PMIへの取り組みはデューデリジェンスのプロセスからその準備がはじまります。次のような短期、中期、長期からなる4つのフェーズに分けて見ていきましょう。

Phase
0

デューデリジェンス実施から
最終契約日まで(フェーズ0)

デューデリジェンスから案件成約に向けた交渉と同時進行ですすめていきます。このフェーズ0(ゼロ)でのテーマは次の2点です。

  1. PMIに向けたステークホルダーへの周知
  2. 統合後の中期計画を見据えた統合スタンスの決定

Phase
1

最終契約後、最初の100日間
(フェーズ1)

統合後のおよそ100日(3か月)で、初期の統合作業を完了させ短期的なシナジー効果を実現させるためのきっかけを作ることがゴールです。次の2点がフェーズ1のテーマとなります。

  1. フェーズ0で策定した数値目標とアクションプランの実行
  2. フェーズ2とフェーズ3のアクションプランのブラッシュアップ

Phase
2

クロージングから1年程度
(フェーズ2)

初年度の決算期間でもある1年目をひと区切りとして、フェーズ1を引き継ぎつつ短期的なシナジー効果の創造を実現することがゴールです。フェーズ2のテーマは次の2つです。

  1. 安定的な統合会社の立ち上げ
  2. 単年度の業績に対してインパクトを与えること

Phase
3

2年から5年程度
(フェーズ3)

このフェーズは中期的な統合作業です。フェーズ2で立てた中長期の経営計画と連動させてシナジー効果を本格的に実現させることがゴールとなり、次の2点を実行します。

  1. 時間を要する人事システムや情報システムの統合推進
  2. 中期経営計画に示されたアクションプランの実行

統合後のリスクの洗い出しと対処方法

統合作業をすすめていくうえで考えられるリスクには次のようなポイントが考えられます。
不測の事態に陥らないためにも準備とその対策を理解しておきましょう。

戦略レベルでのリスクとその対策

M&A前に期待していたシナジー効果と大きくかけ離れた実績に対して「何のためにM&Aをしたのか?」といった疑問や不安などが入り混じり現場が混乱するおそれがあります。また対等な立場でのM&Aでは、お互いの遠慮や譲り合いが原因で、意思決定の遅れや本音でのコミュニケーションが取れなくなることも考えられます。そのようなリスクを回避する対策として次の3つがあります。

  1. M&Aの本来の目的を明確にし、プロジェクトチームで共有する。
  2. チームで目標設定をする際には「通常のゴール」と「ストレッチゴール(達成できる目標よりも少し高めの目標)」を設定し定期的に進捗確認する。
  3. トップがチームリーダーとして力強いリーダーシップを発揮し、必要に応じてトップダウンで意思決定をする。

現場レベルでのリスクとその対策

統合作業をすすめる際に、現場の混乱を避けたいという気持ちは分かりますが、その気持ちが強くなりすぎると計画通りに実行できなくなってしまうことがあります。また現場レベルの統合作業は戦略レベルでの課題がクリアーされないと前にすすめないことが多く、先送りばかりされた結果「結局何もできていない」ということもよく起こります。
そのような事態を避けるための現場レベルでの対処方は次の3点です。

  1. 人事、業務、給与、情報など作業量の多い現場レベルでは「譲れること」と「譲れないこと」を明確にしておくこと。
  2. すべてに期限を設定して100点満点を目指すのではなく、まず60点を目標に作業をすすめてみること。
  3. 作業と役割分担の見える化をおこない、スケジュールを明確にしておくこと。

従業員レベルでのリスクとその対策

従業員レベルで最も気になる点は、人事面での「処遇」と「評価」です。そのため従業員の関心が内へ内へと向いてしまって顧客に対するアプローチが弱くなります。その結果、価値の創出ができなくなるだけでなくマイナスとなることもあります。
このようなリスクに対処するには次の2点を抑えておくと良いでしょう。

  1. 人事に関する「処遇」や「評価」の基本方針を初期段階で提示することで透明性を訴える。
  2. プロジェクトチームにコアとなる人材を巻き込み、モチベーションアップとシナジー効果を生み出す。

このようにPMIを実施する前、中、後で起こりうるリスクをプロジェクトチームとしてリストアップし共有しておくことが大切です。ポイントは「戦略」「現場」「従業員」の各レベルに振り分けて整理するだけでなく対応策を協議しておくことです。