事業承継・後継者不足についてはどこに相談するのが最適か
事業承継は人生において大きな決断で、中々一人では決められないものです。家族に継がせるか、社員の方がいいか、いっそのことM&Aを選ぶか、一体誰を信用したら良いか迷ってしまいますね。
こちらでは安全かつ納得のいく事業承継をするために適した相談先を選ぶためのポイントを紹介します。
「事業承継の相談は顧問税理士・公認会計士に相談している」が1位
中小企業経営者の頭を悩ませる事業承継の問題。後継者を選べないうちに引退を余儀なくされ廃業をしたり会社が傾いたりすることも珍しくありません。男性の健康寿命は平均で70.42歳ということからも決して先送りにすべきでないことがわかります。
したがって中小企業経営者は普段から経営について相談できるパートナーを作っておくことが大切です。
2017年版中小企業白書によると顧問の公認会計士や税理士に相談するが最も多いようです。取引先の金融機関が相談相手となることもそれなりにあるようです。
事業承継の相談先、それぞれのメリットとデメリット
事業承継の相談先としては下記の4つが考えられます。
- 顧問税理士や公認会計士
- 親族・友人・知人
- 取引のある銀行・金融機関
- コンサル会社
それぞれのメリットとデメリットを理解し最適なパートナーを探しましょう。
顧問税理士や公認会計士
顧問税の理士や公認会計士はあなたの会社についてよく知っている存在です。
メリット | デメリット |
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親族・友人・知人
親族や友人、知人はあなた自身をよく知り、尊重してくれる存在です。場合によっては先代経営者が相談相手となることもあります。
メリット | デメリット |
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取引のある銀行・金融機関
金融機関は取引歴が長ければ良い相談相手となるかもしれません。そうでなくとも債務の引き継ぎや今後の信用度の影響があるため立派な利害関係者といえます。
メリット | デメリット |
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コンサル会社
コンサル会社は経営改善を生業としているので事業承継そのものに終始しない課題解決を考えてくれます。
メリット | デメリット |
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以上より事業承継の相談先を選ぶなら、経営コンサルタントとしてのレベルが高い税理士や公認会計士。あるいは法務、税務、会計のサポートをしっかり行ってくれるコンサル会社が適切です。
事業承継の相談先を決めるポイント
事業承継の相談先を決めるためにはいくつかのポイントがあります。会社のこれからは従業員や取引先など多くの人々に関わる問題で、慎重な選択が求められます。
信頼できる相手かどうか
やはり最も大切なのは信頼できる相手かどうかです。
実績があることや専門性が高いことはもちろん考慮すべきですが会社の将来を任せるに値するパートナーとしての資質が問われます。
人として問題があると思われる相手は相談先として真っ先に除くべきです。
税務・法務・M&Aなど必要な専門知識を保有しているか
事業承継はどのような形であっても立派な取引です。会社法の知識や契約の実務、取引後の税についてなど最低限知るべきことは多いです。M&Aをする場合はM&Aならではの問題やPMOについて精通しているパートナーが望ましいです。
PMOとは事業承継後の手続きを指す言葉で、ここを疎かにするとM&Aが崩れます。経営に関わる問題がある場合はとにかく事前に解決しましょう。
企業規模やニーズに合っているか
事業承継、とくにM&Aを選択する場合は会社の規模によってプロセスや注意点が異なります。したがって自社の企業規模に合ったM&A会社を選んでください。たとえば大手金融会社のM&A事業は大企業のサポートに強い傾向があります。一方で事業コンサル系のM&A会社は中小企業のサポートで力を発揮します。
知名度やブランドは一つの価値ですがそれよりも自社の規模やニーズに合ったサポートをしてくれるM&A会社を選びたいです。中小企業であれば手厚いサポートや経営理念の尊重がニーズとして一般的です。
企業価値を高めてくれるか
事業承継とは即ち会社を売ることを意味しますが、M&Aであればできるだけ企業価値を高めておきたいです、企業価値を高めることができればそれだけ高値で売れるからです。
企業価値といえば一般的に売り上げを意識しますが、実はそうと限りません。たとえ赤字であっても優秀な人材が揃っていたり、優良顧客のリストを持っていたりと思わぬ評価ポイントがあるものです。逆に企業内のガバナンス不全が見られる場合はM&Aの価値が大きく下がります。繰り返しますが経営に関わる問題はM&A前に解決することが大事です。
幅広いネットワークを持っているか?
第三者に対して事業承継をするとして、一人で買い手企業を探すのは困難です。よって相談先のネットワークが決め手となります。国内、海外問わずたくさんの後継者候補を見つけてくれるならそれだけ選択肢を増やせるでしょう。
ただし、後継者候補は量だけでなく質も無視できません。しっかりと自社の特徴やニーズを汲んでもらえるかどうかはここでも響きます。
未来を見据えた提案ができるか
M&Aはその場限りの取引ではありません。今後数年、数十年と会社を続けていくための手段であることを忘れないでください。安定して会社を続けられることは従業員や取引先にとっての安心につながります。
仲介の役割しか担わないM&A会社の場合はノルマを優先して取引の質を二の次としてしまいがちです。M&Aはその7割が不本意な結果に終わるようですから如何に後継者選びが大切か想像に難くありません。
M&Aの提案を受けるときはそれがいくらで売れるか、買い手企業をなぜ信頼できるか、M&Aをした後はどのように事業を行っていくのかしっかり確認しましょう。
事業承継は、できるだけ早い相談をすることが成功のカギ
高齢化社会の問題は中小企業にも響いています。経営者の年齢は往往にして高いものですが最近では70代や80代の経営者も珍しくありません。そのせいか中小企業白書によると中小企業が廃業を選択する最大の理由が経営者の健康問題です。いくら生涯現役を目指しても体がそれを許してくれません。
事業承継には短くても1年、長いと3〜4年以上の期間が求められます。できるだけ早く相談先を決め、万全の体制での引き継ぎを成功させましょう。
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