事業再生による再建を決断した経営者の事例

経営難に陥ると、悩みを抱え込んでしまう経営者は少なくありません。ですが、1人で考えられる対策には限界があります。以前の記事『事業再生・企業再生で倒産からの脱却方法』でご紹介したように、倒産が迫っている会社が再建する方法として、「事業再生」という選択肢もあるのです。一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、実際にどういったことを行うのかをイメージできている方は少ないでしょう。

本記事では、赤字体質だった企業が事業再生で毎期億単位の利益を計上できる企業になるまでの歩みをご紹介。現在経営難で悩んでいる方、どうにかして会社を再建したい方、必見です!

赤字から事業再生で再建した水処理機器メーカーの事例

【基本情報】
T社
業種:製造業
事業再生前の経営状況:赤字体質で、操業すればするほど損失が膨らんでいた

K総合商社の関連会社であるT社は、水処理機器に使うフィルタープレスを製造しています。環境汚染が問題となればなるほど注目されるものの全体的に小規模な業界であるため、同社を含む3社の寡占状態となっていました。
その中でもT社の顧客は一流企業が多く、リピートオーダーも多いという利点があるにも関わらず、操業すればするほど損失が膨らむ赤字体質でした。

事業再生で、浮かび上がった問題点

倒産を防ぐため、T社は事業再生を行うこととなりました。まず実施されたのが問題点分析です。

経営上の問題点

商社系であるため、経営陣は代々K総合商社からの天下り人事で、工場経営の知識が不足していました。工場運営に伴う生産管理、工程管理、原価管理、在庫管理、労務・現管理などはプロバーの工場長や幹部職員に任せており、現場がわかる経営者が不在だったのです。

さらに、天下り経営者ゆえ「自己の任期中だけ何とかなればよい」という考えがベースにあり、下記の問題が引き起こっていました。

  • (1)「売上減少=責任問題」となるので、採算度外視の売上至上主義。
  • (2)損失も責任問題となるため、設備投資は久しく行われず、工場が老朽化。現場は老朽機を工具の知恵・経験でやり繰りしている状態。
  • (3)非稼働老朽機器の処分見送り、試作品・旧在庫の放置などが恒常的に行われ、工場内スペースが狭くなり、生産ラインを阻害。
  • (4)経費切詰め策として、現場の労働者に対し残業をしないよう触れ回る。

このような経営姿勢が、従業員のやる気のなさを招いていました。また、営業も、細かなスペックに対する知識が欠如していたため、交渉はプロパーの営業部長に一任する形に。営業部長は「売上が伸びる=自己の保身」と理解していたため、採算よりも受注確保を第一としていました。

生産管理、工程管理の問題点

生産管理、工程管理が不十分であったため、生産ラインが非効率的に。また契約の詰めが甘く、受注後に顧客側の要請でラインが変わることも珍しくありませんでした。

そのため、既に動き始めている次のプロジェクトの工程に割り込むこととなり、スケジュールに乱れや遅れが生じるように。割り込んだ方も割り込まれた方も納期が大幅に遅れ、それが顧客からの追加サービスや値引き要請につながっていたのです。

問題点を改善し、事業再生へ

問題点が明確になったら、行うべきことを洗い出します。洗い出したポイントから取れる行動を現場レベルで実施していくことで、事業を再生し、再建を図っていくのです。

機械・在庫の実地棚卸と工場内の整備

何年も行われていなかった機械・在庫の実地棚卸をまず行いました。
すると、在庫を二重に保有していることが判明。非稼働老朽機器や旧在庫が場所を占拠していたために、新在庫へ台車でのアクセスが難しかったことが原因でした。

そこで「現経営者の責任を問わない」という条件で、非稼働となっていた老朽機や旧在庫を処分。工場内に大きなスペースを生むことができ、在庫へのアクセスや生産ラインの複雑さが改善されました。

また、雨漏りによる在庫の劣化も浮き彫りに。雨漏りの修繕工事は親会社への承認が必要で、実地調査が行われることを嫌い、そのままにしていたのです。
と同時に、在庫の台帳と現物で多額の誤差が発生していることも明らかになりました。実地棚卸後のレビューで、工場長が「現経営者の命令で赤字の圧縮策として在庫調整をしていた」と証言したことで、粉飾が判明したのです。この責を負って、現経営者は退任することとなりました。

思わぬ形で、今回の再建で一番のネックであった経営者の交替を実施できたことで、後任には工場実務経験のある者を親会社より派遣してもらうことができ、新体制を発足することができました。

原価管理

実地棚卸のレビュー後、工場長や幹部社員を集めて原価管理の洗い直しを行うと、営業の現場では原価を無視した交渉がなされていたことが分かりました。

そのため、まず営業で、顧客との取り決め事項はすべて契約書に織り込み、顧客側の都合でスペックを変更する場合は顧客負担とすることを極力交渉することを徹底。
現場では契約書を遵守するようにすること、製品の標準化を進め、下請けに単価引下げの要請をし、トータルで商品単価を下げ、競争力を増すことに努めました。

労務

高齢者のリストラと若年層の補充が懸案事項だったので、定年に達していた工場長を始め高齢者に、誠意を持って退職勧告を行い、受け入れてもらうことができました。若年層については、漸次採用することに

工場内の整備

ここまでは再建策の第一段階。事業再生に向かっての第二段階として、工場内の整備を行いました。工場内を整備し生産ラインの効率化を図ることが、黒字化に一番結びつくのです。
ですが、現工場は木造で雨漏りなどの老朽化がひどく、また採光面でも問題があったため、再建を機に鉄骨スレートの工場に建て替えることとなりました。

新工場は生産ラインを主眼に機器類、作業場所が設置され、現工場から新工場に移る際に工場内の整備を行ったため、不要なものがなく作業速度、作業効率が飛躍的に向上しました。

生産管理、工程管理制の導入

生産管理は生産管理表、工程管理は工程管理表に記載されるようになっていたものの、実際は管理表から離れてラインが稼働することもしばしばありました。

そこで新工場長を中心に製造スタッフが事前の打合せを行い、管理表の遵守を徹底。きちんと管理表通りに進めることを習慣化づけるように努めました。

在庫管理

生産管理が不十分であったため、受注・生産に正しく対応する在庫とはなっておらず、結果として「要らない在庫」を保有していました。また、顧客の仕様変更にたびたび対応していたために、変更前の在庫が放置された状態に。

ですが、生産管理、工程管理制の導入と徹底を行ったこと、工場内の整理整頓を進めたこと、顧客との間で仕様変更の取り決めをしたことで、二重在庫がなくなり、在庫管理もしやすくなりました。

事業再生による再建後のT社は…

再建後、業績は向上。毎期億単位の利益を計上できる企業となり、K総合商社の機械部門で中核を担うようになりました。のちにK総合商社の構造改革時に大手メーカーに企業売却され、現在はその下で順調に業績を伸ばしています。

まとめ

今回の事業再生による再建において一番のネックとなっていたのは、経営者の交替でした。

T社はK総合商社の関係会社であったために、人事権は管轄する本部の本部長とその幹事役員にありました。経営者が不適任で交替するということは、本部長として人材を見抜く目がなかったことを意味し、責任問題となるおそれがあったために、交替がなかなか実現しなったのです。まさに「事業再生による再建の最大の敵は身内にあり」の状態でした。
ですが、事業再生のプロが指導に入ったことで問題点が次々と浮き彫りになり、結果として経営者は交替。毎期億単位の利益を計上できる企業にまで復活することができたのです。

経営不振になったら、経営者やその身内の多くは焦りから現状把握や状況分析ができなくなります。冷静に状況を分析し、経営の問題点を明らかにして事業を立て直すには、第三者を入れる必要があるのです。
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