債務放棄(債権カット)・リスケ・DDSの銀行返済対策

中小企業にとって資金繰りは大変なものですね。十分な資金がなく債務の返済が難しい時、破産や民事再生が現実になりつつあります。それでも会社を会社を存続させたい、自分たちの手で経営を続けたいと思うのは当然です。

こちらでは債務の負担を軽くする手段としての債務放棄、リスケ、DDSについて紹介します。銀行への交渉方法を考えながらご覧ください。

知っておきたい返済が難しいときの対策

一般的に債務の返済が難しくなれば私的整理、民事再生、自己破産のいずれかを選択しなければいけません。このうち民事再生は債務を大幅に減額されるものの最低限の財産を残せます。破産してしまえば会社の財産は全て弁済に当てられ法人格も消滅します。

よって、会社に対するダメージを最小限に抑えたいなら私的整理での解決が望ましいです。私的整理とは裁判所に頼らず債権者と交渉し、返済の負担を減らすことを言います。個人の場合は利息の免除とリスケジュールが一般的ですが、法人の場合は債務の元本そのものを減らすための交渉もできます。

ここでは比較的よく用いられるリスケジュール、DDS、債務放棄について紹介しますが、どうして銀行はこれらの申し出を検討してくれるのでしょうか?

それは、銀行も損失を減らしたいからです。破産の場合は債権が消え、民事再生の場合も債権額が大きく減ります。したがって私的整理できるならその方が好都合です。

ただし私的整理を認めてもらうためには「銀行にとって相応のメリットが求められる」ことも当然です。

リスケジュール

リスケジューリングとは、返済プランの調整です。基本的には返済期間を長くすることで1回あたりの支払い額を低くします。もしくは資金繰りが苦しい最初の数年間だけ返済学を減額します。

例えば2000万円の借金を5年で返すとすれば、1年あたり400万円の元本返済です。これを返済期間10年にできれば1年あたり200万円の元本返済にできます。

どちらも元本の支払額は同じですが手元に残る資金が増える分、債務者である中小企業にメリットがあります。資金繰りの状況に応じて、返済期間の長さが異なります。

リスケジューリングのデメリットは返済期間が伸びる分、利息の支払い総額が増えるということです。利息は残債に応じて支払うためこれは受け入れなくてはいけません。

リスケジューリングを銀行に提案するためには、現在のキャッシュフローを正直に話してリスケすれば返せると正しく主張することが大切です。ちなみに銀行は返済が伸びることに加え貸倒引当金が増える分の利益減少も嫌がります。リスケの対象となった債務については貸倒引当金を70%で計上することが決められているのです。

ここまでケアできることが望ましいです。

新制度「新型コロナ特例リスケジュール」が制定されました。

DDS(デッド・デッド・スワップ)

DDSとは借り換えのことで、正式にはdebt debt swapと言います。個人の借り換えが「今より利息の少ない金融業者で借り直す」ことであるのに対し、DDSは「返済の優先順位が低い債権に借り換えして返済を猶予してもらう」ことを指します。

債権の優先順位を低くしてもらえれば、それ以外の債務から優先して処理できます。そして財政再建ができてからDDSを行った債務の返済を行います。このような性格を持つ債権を劣後ローンと言います。

例えば2000万円の債務を10年で返す必要があったとします。この債務についてDDSを行い、支払い期間を15年に伸ばしたとしましょう。その結果として他の債務対応に10年かかり、その間は毎年50万円ずつ元本を払っていたものとします。すると、残りの5年間で1500万円を返し切ることになります。300万円ずつ払うのか、14年目まで50万円ずつの返済で最終年に1300万円一括で返済するのかは金融機関との合意によります。

一見難しい制度ですが、要するに多重債務解決プランです。支払いを大幅に猶予する分、質の高い財政再建計画を伴わなくてはいけません。

DDSのデメリットは猶予してもらった後に大きな返済が待っていること、リスケより回収可能性が低い傾向にあるためその分高利になることです。ここは個人の借り換えと大きく異なります。

債務放棄(債権カット)

リスケも無理、DDSも無理という場合でも銀行に債権の一部を免除してもらうよう交渉する余地は残っています。

債務放棄は債務の一部を免除してもらう方法で、銀行にとって大きなデメリットになります。DDSと大きく異なる点であり最大のメリットは元本そのものが減ることです。また、社長から会社への貸付について債権免除を行うことで相続税の節約が可能です。

しかし、債権を免除してもらうことには相応のデメリットがあります。まずは銀行に要求を通しづらい点です。債務免除はただ銀行が損をするだけですから、かなりの難色を示されるものと覚悟してください。

そして、債務を免除されるということはその分債務者がお金を得ることを意味します。これは債務免除利益となり法人税の計算に含まれます。債務免除のおかげで特別利益が増えたと喜んでいる場合ではないでしょう。こちらは繰越欠損金との相殺で解決を試みます。

債権免除をしてもらうためには次の手順で行います。

①支払督促

債権者が支払督促せずに債権免除すると、寄付をしたと見做されます。銀行の利益は減り、債務者は贈与を受けたことになります。贈与税は法人税より高いので気をつけましょう。

②財務状況の確認

債務免除を銀行で受ける基準は決して低くありません。債務超過が3〜5年以上続いていることが前提となります。回収可能とみなされれば、債権免除以外の方法で手打ちになるでしょう。

③債務免除通知書が届く

債務免除を銀行に認めてもらえれば債務免除通知書が届きます。債務免除の事実を残すため内容証明郵便で送られてきます。

債権を減らすことは銀行が一方的に損をすることにつながります、それでも民事再生や破産されるより有益と判断されれば、銀行が受け入れてくれるかもしれません。十分な専門知識と資料、そして交渉スキルを以て臨みたいところです。

ちなみに債務を払えない状態が続くと銀行がサジを投げ、債権回収会社(サービサー)に債権を得る場合があります。サービサーは銀行から額面の5〜30%で債権を買い取ります。そして債務者へ取り立てを行います。

サービサーは実のところ「買取額+アルファの金額を得られれば良い」と考えています。そのため根気強く交渉すれば本来の債務よりずっと少ない金額での和解が可能です。

ただしサービサーが登場している時点で債務者の財務状況はかなり悪く、サービサーによる債務免除も「額面との差が」特別利益として計上されることに注意が必要です。言うまでもなく法人税を払えないと借金よりも怖い取り立てが待っています。

まとめ

ここまで私的整理としてよく用いられる3つの方法を紹介してきましたが、どれも銀行にとってデメリットになります。あくまでも法的倒産処理というより大きなデメリットを避けるため、あるいはダメージ軽減のために銀行が受け入れていることを注意してください。

私的整理がうまくいくと、倒産処理なく会社を残せます。返済の負担を減らして会社の債権に尽くしましょう。独力で難しい時も、事業債権に強いコンサルタントと組むことで選択肢が広がります。

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