会社売却のメリットと売却益

会社を売る、M&Aをするというのは大企業だけの話ではありません。中小企業にとっても会社売却は珍しい話でなく、時には海外の会社が買収企業に名乗りを上げることもあります。

こちらでは会社売却を考えているけれどイメージがわかない経営者のために簡単なメリット・デメリットを紹介します。

会社を売却するメリットとは

会社を売却するメリットにはこのようなものがあります。M&Aには特定の事業だけを売却する事業譲渡という形もありますが会社売却と手続きやメリット・デメリットが変わってくるので別として考えましょう。

本記事は「会社売却」をメインに解説します。

売却益を得ることができる

会社売却のメリットはなんといっても売却益を得られることです。会社売却は株式譲渡という形で行われますが会社の資産やこれからのキャッシュフローなどの観点から価値が決まるため大きなお金を手にできます。

売却益は会社の規模によりますが上手くいけば億単位の利益になることもあります。
一方で事業譲渡の場合は譲渡益が会社に入るため社長がそのお金を手に入れるためには手続きや税金上のデメリットが発生します。

年商1億以上の会社の場合は、数千万の売却益を得られることも

大体、売却額の相場は「通常利益の3~5倍」

会社の値段は資産価値だけでなく将来入るキャッシュフローも考慮します。さらに営業権の価値も上乗せすると経常利益の3〜5年分と計算されます。経常利益を売り上げの5%と仮定すれば年商1億円の会社でおよそ1500〜2500万円の価値がつくことになります。

もし年商が5億も10億もあればもっと多額のお金を得られるでしょう。
これだけの創業者利益を得られればゆったりとリタイア生活をすることもできますし、新たな事業への投資に使うこともできますね。

そこから減価償却費や債務が差し引かれるとはいえ大きな取引になることは間違いありません。これはそれだけの資金力のあるオーナーが事業を買い取ってくれることを意味します。理念さえ一致すれば会社にとっても従業員にとってもプラスになるはずです。

株式譲渡による20%の税金を支払っても、億単位のお金はのこせる

会社を売却する場合は株式譲渡という形で行われます。つまり会社からみれば経営者が変わるだけです。株式譲渡による税金は所得税と住民税を合わせて20%です。事業譲渡のように法人税や消費税の心配は要りません。
20%の税金と聞くと手元に残るお金が少なくなるように感じますね。しかし冷静に計算すると十分なリターンがあることがわかります。

例えば年間売り上げが8億円でそのうち利益が4000万円の場合、大体の売却額が1.2億から2億円と考えられます。そこから所得税および住民税を20%支払ったとしても残るお金は1億6000万円です。

たくさん税金を払うということはたくさんのお金を手にすることと同じです。税金を過度に恐れず得るものの大きい選択肢を取りましょう。

早期リタイアをすることで、
自分の時間が持てる

会社で最も忙しく、会社のことを考えているのは他でもない経営者です。とくに社長が会社の顔である中小企業の場合は社長自ら請け負うべき仕事が増えてしまいます。もし、「そろそろリタイアしたい」と考えているなら会社売却をして社長の役割を降りる手段が考えられます。

リタイアした後は自分の時間を思い切り使えるようになります。ゆったりと老後を過ごすのも良いですし、売却益を元手に新たな投資を始めてみることも悪くありません。本当は打ちこみたかった趣味に没頭することや家族と向き合うことを始める方もいます。

借入金の連帯保証から解放される

会社売却をすると債務まで買い手企業に引き受けてもらえます。中小企業の多くは借入金の連帯保証を社長個人がしていることを考えれば、良いタイミングでの会社売却は大きなリスクヘッジになるといえます。

もちろん、会社売却をすれば連帯保証からも解放されます。そもそも経営権が変わったのに会社の債務におびえなければいけないのはおかしな話ですよね。連帯保証は実質社長に無限責任を課すものなので連帯保証からの解放は精神的な安らぎを与えてくれます。

会社を経営危機や後継者不在問題から救うことができ、称賛される

リタイアしたいというだけなら後継者を自身で見つければ良いのですが、事業承継で悩む経営者はとても多いです。中小企業庁の調査によると中小企業のおよそ半分が経営者の健康問題によって廃業しています。そのため、社長が健康なうちに後継者問題や経営危機を解決したいものです。

企業理念や社風に理解ある買い手企業が見つかれば、自身がリタイアした後も安定した経営を守ることができます。会社を救うM&Aは社会的な賞賛を受けるでしょう。たとえ売り手企業が赤字や経営破たん寸前であっても買い手がつくことはあります。

従業員の雇用を守ることができる

会社を売却した後に気になるのは従業員の雇用ですが、労働基準法がある以上問題なく従業員が働けます。会社の資産は人であり仕事に精通した人間をコストなく雇えることは買い手企業にとってはむしろメリットになります。誰にも引き継げずに廃業するくらいなら会社を売却した方が良いのです。(後継者がいればその限りではありません)

ただし、事業譲渡の場合は売却するものの範囲が契約によって定められるため従業員の雇用を守れるように調整しなければいけません。

会社を売却するデメリットとは

一方で、会社売却にはこのようなデメリットがあります。会社売却は何よりも買い手企業とのマッチングが問われることをご理解ください。

引継ぎのための拘束期間が
発生することがある

いきなり社長を交代されても買い手企業はどう経営したものか迷ってしまうでしょう。そこでM&A終了後は買い手企業だけで運営できるよう引継ぎが行われます。数年間子会社社長や顧問という形で残るケースがあることも想像しておきましょう。

もちろん、拘束期間が発生するのは社長だけではありません。会社を辞めたいと考えている社員についても引継ぎが終わるまでの数年間は働いてもらうような契約がなされることがあります。価値のある人材ほど取引結果に関わってきます。

リタイア後に寂しさを
感じることがある

自由な時間ができるということはこれまで会社のために使っていた時間が空いてしまうことを意味します。新しい挑戦や趣味のため、家族のために時間を使えてうれしい反面、経営者でなくなったことに対する寂しさが湧くかもしれません。もう会社の名前で領収書を切ることも社長と呼ばれることのない日々に慣れていくのも経営者にとっての課題と言えます。

時には会社に顔を出せるような関係性を作っておくのも一つの手段ではないでしょうか。

譲り先の買い手企業を
探すことが難しい

会社を買ってくれるならどんな企業でもいい…そのようなことを考える経営者はごくわずかだと思います。会社を売る以上は自社の理念に共感し、自社を守ってくれる相手を求めるのが人情です。

実際のところ、多くの経営者が会社の核となる部分を尊重してくれる買い手企業を希望し、この点がM&Aの決め手となります。

ところが買い手企業を見つけるのは難しく、速さだけを優先したM&Aを行ったせいで望ましくない買い手企業と取引してしまう事例がよくあります。買い手企業とのマッチングができていないと会社の中身が変わってしまうことや従業員の居場所がなくなってしまうことが考えられます。場合によっては売却前より経営悪化することもあるため、納得できる買い手企業と出会えるかどうかが重要です。

赤字会社を売却し成功した事例

ある会社は赤字経営で事業継承もできず、倒産寸前という状況でした。しかし、M&Aで会社を売却するという判断をし、見事に倒産を免れました。どのような流れで会社を売却し、何が成功の要因だったのか?紐解いてみましょう。

赤字続きの会社が成功した
最後の手段

機械卸売業を営んできたAさん。社員20名の社員を抱え、長年堅実な経営が続いていました。しかし、人材不足と人件費・仕入れ費用高騰の煽りを受け、ここ数年は赤字経営に。従業員に賞与も払えない状況でした。

加えてAさん自身も歳をとり、体力・気力ともに赤字の会社を建て直して経営しつづけることが難しい状況になってきました。

M&Aで事業譲渡して、
廃業することに決めた

赤字経営に加えて、後継者が見つからず事業継承の目処も全く立っていない状況で、「倒産」の二文字が脳裏に浮かんだAさん。従業員が露頭に迷う前に会社を畳もうと決意して経営コンサルタントに相談したときに、M&Aという手段を教えてもらいました。

会社を譲渡すれば事業を残せるし、従業員の雇用も守られる。跡を有能な経営者に任せることができ、自分も経営から身を引ける。数々のメリットを考えた結果、M&Aで事業譲渡する決意を固めたのです。

すぐに決まった売却候補は
ライバル会社だった

赤字ではありましたが、販路が確立していてノウハウを持っている社員が多く在籍しているAさんの会社。買い手企業を募集したところ、ほどなくして近くにある同業ライバル会社であるB社が名乗りをあげました。

すぐさま経営者同士が面談をスタート。会社を譲渡して事業と従業員を守りたいAさん、新しい取引先と優秀な人材が欲しいB社。両者ともにメリットが大きく、基本合意契約が結ばれ、買収条件の交渉が行われるまで時間はかかりませんでした。

Aさんは売却益を欲張ることもなく、円滑にことが運び、2ヶ月後に譲渡契約が成立したのです。

成功したポイントとは

その後、Aさんの会社はB社に引き継がれ、今では順調に事業が回っていると言います。

今回M&Aに成功したポイントとして、まずAさんが債務超過になる前に廃業を決意して行動を起こせたことが挙げられます。もし、あのまま事業継承を考えず赤字経営を続けていたなら、倒産は免れなかったでしょう。

Aさんの会社がライバルであるB社にとって魅力的な事業と資産(人、取引先)を持っていたことも大きな要因と言えます。さらに、同業でありビジネスの形態や思惑、メリット・デメリットなどの相互理解ができていたことで、スムーズな事業譲渡が実現しました。

失敗事例から学ぶM&A

多くの中小企業がM&Aによって事業継承を実現していますが、失敗する可能性も少なからずあります。どのような原因で交渉が決裂してしまうのか?事例を見てみましょう。

交渉中にやむなく中断

医療法人を経営していたCさん(73歳)。自身も医師として医療現場に立ち続け、後継者探しを全くしてきませんでした。家族は医師免許を持っていないため、身内に事業継承させることもできず、M&Aで法人を売却することにしたのです。

買い手候補が見つかって、これから交渉手続きがはじまるという矢先、Cさんが病気で急死してしまいました。跡を継げない家族も、Cさんの病院に通っていた患者も大困惑。結局事業譲渡に失敗して廃業を余儀なくされることに。残された家族に自宅や医院の相続税が重くのしかかるという結果になってしまいました。

言い方は厳しいですが、ご自身が事業継承について長い間全く考えていなかった結果、このような悲劇につながったのです。

売却交渉中に欲が…
決断出来なかった末路

不動産会社を営むDさん(68歳)は売却益が見込めるタイミングで事業譲渡をし、リタイアしたいと考えていました。業績も順調で、優秀な社員が揃っていたDさんの会社。買い手の募集を開始したところ、すぐさま複数の会社が名乗りを挙げました。

特に条件が良かった2社に優先交渉権を与え、順調にM&Aが成立すると思われた矢先、Dさんは「もっと良い条件で買ってくれるところがあるはず」と言い出したのです。もちろん、自分の会社を少しでも高く買ってほしいと考えるのは人情というもの。しかし、交渉がはじまっている段階で他の買い手探しをした結果、2社からの信頼は失墜。交渉決裂となってしまいました。

欲に目が眩んでしまった結果、M&Aが破談になってしまうというケースも少なからずあります。

まとめ

築き上げた会社を売却するという決断はなかなかしづらいものだと思います。会社売却は一生に何度も無いことですからじっくり考えるのが当たり前です。売却した後のメリットを最大化でき、かつ会社売却によるデメリットを減らしたいなら信頼のできる買い手企業と出会うことが大切です。

会社売却についてもっと知りたい、会社売却に対する考えを深めたい経営者は専門家であるM&Aアドバイザリーに相談してみましょう。

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